「グリザイアの果実」で海を作ったはなし

先日、グリザイアの打ち上げに参加させて頂きました。
グリザイアでお世話になった方々に加えて旧知のプロデューサーさんと久々にお会いし話が弾みました。意外な出会いがあるのも打ち上げの楽しいところです。

Patecでは「グリザイアの果実」1話のファーストカットを担当させていただきました。
制作の概要はこちらで公開しているのですが、その時の技術的な思い出話を少ししたいと思います。


このカットを制作するにあたって監督から説明されたのは、深い海へと沈んでいくイメージでした。
通常であればAdobe AfterEffectsとRedGiant Psunamiというプラグインを使用して制作するような事例なのですが、今回のように爆発の照り返しや波のうねりを細かく制御する必要がある場合は前述の組み合わせでは少々厳しい部分があります。ですので3DCGソフトウエアで作成する必要があったのですが、そこで今までモーショングラフィックスの制作で使用してきたCinema4Dを使って作れないかと調べはじめたところ、HOT4D (Houdini Ocean Toolkit for Ciname4D)というプラグインを見つけました。
Houdini Ocean Toolkitとはエフェクト系で有名な「Houdini」という3DCGソフトウエアの海を作成する機能をオープンソース化したもので、HOT4DはこのHOTをCinema4Dで使用できるように開発されたプラグインです。ただ、HOTはデモやドキュメントを見る限りでは上空や地上から見下ろすタイプの海しかなく、海中から見上げた海面を上手く作成出来るかは未知数でしたが、今回必要としていたのは波の動きでしたのでまずは試してみることにしました。

まず、これが平面にHOT4Dを使用しただけの状態です。
HOT4D_01

次に各パラメータを調整した状態です。この段階で形状は一気に波っぽくなりますね。
HOT4D_02

少しわかりやすくするために色を付けてみました。
HOT4D_03

こういったディストーションツールが無い場合は、ノイズなどを使用して制作することが多いのですが、やはり海を作る為のフレームワークだけあって短時間で目標に近い形状が出来るのは非常に有用ですね。

HOT4Dの簡単な紹介でした。では、実際にはどのように3Dシーンを制作したのかをお見せします。
こちらが、「グリザイアの果実」1話のファーストカットの3Dデータです。
まずは、上から見た画です。海を上から見ると波のグリッドサイズが小さくリピートしている様に見えますが、それはこのシーンが非常に広い範囲を映したものであるのと、海中から見た場合に細かなリフレクションと透過を発生させるにはこれ位のサイズが適切でしたので上からの見た目ではこのようになっています。また、爆発の照り返しを表現するために球体にノイズマテリアルを割り当たオブジェクトを置いています。このオブジェクトは照り返し具合のコントロールをしやすくするためにMoGraphで配置し、動きをつけています。
HOT4D_04

これは海中から海面を見上げた画です。上から見た画とは随分違いますね。こういったシーンでは見た目優先で制作するため出来上がった3Dデータはカット用のカメラ以外では成立しない事もあります。
HOT4D_05

上の画をプレビューレンダリングした画です。実際にはコンポジット時に細かな調整をするため、ハイライトやシャドウ、リフレクションなどの素材を分けてレンダリングしています。
HOT4D_06

3Dでの素材レンダリング後コンポジット時に屈折や反射、発光具合も調整しています。Cinema4DにはAfterEffects用にカメラデータを出力する機能がありますので、AfterEffcts上でもCinema4Dと同じ3D空間を再現しています。マリンスノーと呼ばれる白いパーティクル状のものはTrapcode Particularを使用してAfterEffectsで作成しています。

このような工程でグリザイアのカットを作成しました。
Cinema4Dはモーショングラフィックスに強いと言われており、ライティングやシーンの設計が他の3Dソフトと比べると独特ですが、慣れれば使い易いものでもあります。



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